トレーニングの効果をあげるための原則①

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 レースでの目標を定めそれを達成するためには、大会当日までのトレーニングが重要なことは言うまでもありません。誰もが効果的にトレーニングを行い成果を得ることを望んでいるはずですが、そのためにはいくつかのトレーニングのルールを知っておく必要があります。

 それではトレーニングの原理・原則と呼ばれるトレーニングプログラムを考えるときのルールについて見ていきましょう。

 

1.特異性

「人の身体は刺激に対して特異的に適応する」というトレーニングの原理があります。

特異性には、①場所特異性 ②エネルギー供給特異性 ③速度特異性などがあります。

 

①場所特異性

 トレーニングの効果は負荷をかけた箇所にのみ現れるというとこです。当たり前のことですがスクワットをしたら脚の筋肉が鍛えらます。スクワットをすることで腕の筋肉が発達し、逞しくなるということはありません。

 マラソンの場合は脚の筋肉をよく鍛えておかなければいけないことは言うまでもありませんが、その他の筋肉を鍛えておくことも重要です。走るということは全身を使った運動です。背中や腹、胸など走るだけでは十分に鍛えることが難しいところをトレーニングしておくことが良い走りに繋がります。

 

②エネルギー供給の特異性

 運動強度や運動持続時間によってエネルギーを供給する仕組みが変わるという身体の特性のことです。ヒトが身体を動かすときに必要なエネルギーは身体の中で作られ筋肉へ送られていきますが、その仕組みは大きく無酸素性エネルギー供給と有酸素性エネルギー供給の2つに分けられます。これはエネルギー供給の過程で酸素を必要としない(無酸素性)か酸素を必要とする(有酸素性)かということなので、その運動自体が無酸素か有酸素かという話ではありません。この2つのエネルギー供給機構は常に同時に働いていて、運動強度や時間等によって必要なエネルギー全体の中での関わり方が変わります。

 マラソンでは特に有酸素性のエネルギー供給が増えるので、トレーニングでも有酸素性エネルギー供給能力に焦点を当てた内容が多くなります。

 

③速度特異性

 トレーニングした動作速度での筋力発揮が高まるということです。つまり、遅い動作速度でトレーニングを行えば低速度での筋力発揮に適応し、速い動作速度でトレーニングを行えば高速度での筋力発揮に適応することになります。

 長い階段ダッシュや山登りは酸素摂取能力の向上や筋力増強には効果的ですが、どちらも動作速度はマラソンを走るときに比べて遅くなるので、大会前に集中して行うことは速度特異性の面から考えると避けた方が良さそうです。

 

 

 このようにトレーニングプログラムを作成するときはそのトレーニングによってどんな効果を一番に望むのかー筋力UP?,酸素摂取能力の向上?,脚筋持久力UP?ーを念頭に置いて作成する必要があります。

 

 

 

2.適切な負荷をかける

 ヒトの身体の器官(筋肉や心臓など)は適切な負荷をかけることでその負荷に適応していきます。

 最大心拍数の60%の速度で60分間のジョギングを続けていると次第にその運動に慣れていきます。慣れてしまうと、最大心拍数の60%での走速度が上がったり以前と同じ速度で走ることのできる時間が増えたりと変化が見られるようになります。

 適切な負荷をかけてトレーニングを行った場合、身体はその負荷に適応していきますが、かける負荷が少なすぎると身体能力は現状維持もしくは低下してしまいます。反対に負荷が過度になってしまうと障害を引き起こす危険が高くなってしまいます。

 

①負荷の3要素

 持久力トレーニングでの負荷を決める要素には「強度」「時間」「頻度」の3つがあります。

 

 強度は心拍数やペース、RPE(主観的運動強度)などを変更することで決定することができます。時間はトレーニング1セットにかける時間のことで、ランニングの場合は距離に置き換えることもできます。一般的には強度が高くなると、そのトレーニングの時間は短くなります。

 例えば、最大心拍数の90%程度の強度であればトレーニング時間は2~3分程度に、最大心拍数の70%程度の強度であれば1時間程度は走り続けることができるでしょう。

 

 つまり、強度と時間を変更することで1回のトレーニングの負荷が決まってきます。

 

 そして、一週間や1ヶ月間などの期間にそのトレーニングを何回行うかという頻度を決定することでレースまでのトレーニング全体の負荷が決まることになります。

 

 

②持久力トレーニングでの適切な負荷

 では、マラソンなどの持久力トレーニングにおいて適切な負荷とはどういうものなのかを考えたいと思います。

 負荷を設定するときにまず考えなければいけないのが、どのぐらいの強度でトレーニングするのかということです。強度によって継続できる運動時間が決まり、そのトレーニング1回の負荷が決まります。トレーニング1回の負荷が決まればそのトレーニングを1週間に何回行うか(=頻度)が決まります。

 

 持久力の代表的な要因の一つに酸素摂取能力があります。エネルギーを作るのに必要な酸素を身体の中により多く取り込もうとする能力のことを言います。

 この能力の向上を主目的としてトレーニングする場合は酸素摂取能力という機能に対して負荷をかけていくことになります。

 トレーニングの効果はその機能に最大の負荷をかけたときに最も向上するので、酸素摂取量の向上を目的としてトレーニングをするのなら、酸素摂取能力の最大値である最大酸素摂取量(ml/min/kg)に至る運動強度でトレーニングすることが最も適切な負荷ということになります。もちろんこれよりも強度の低い負荷であっても酸素摂取能力は向上しますが、最大の効果を引き出すためには最大酸素摂取量に至る強度でのトレーニングが効率的な方法です。

 マラソンの場合は他にもう一つ、エネルギー基質としての糖利用が急速に増えるポイントである乳酸性作業閾値(LT)もパフォーマンスに影響を与える要因となります。この場合もやはりLTの強度でトレーニングするのが最も効果的だと言えます。

 

 

 

3.適切な負荷は変わっていく

 適切な負荷をかけてトレーニングをすることで身体能力が向上するとこれまでと同じ負荷では適切な負荷とはならなくなってしまいます。トレーニングで効果を出していくためには能力の向上に合わせて負荷を変えていく必要があります。

 ずっと同じ負荷で運動していてはタイムアップやもっと長い距離のレースにチャレンジすることは難しいかもしれません。

 負荷を変更するためには先に説明した「強度」「時間」「頻度」3つの要素を変更することになります。

 4分/1kmのペースで5km走ることができるようになり、さらにパフォーマンスアップを望むのならペースを3’55″/1kmにしたり距離を伸ばしたりといった変更をしなければなりません。もちろんこのトレーニングを行う頻度を変えてみるのもOKです。負荷の要素をどのように変更するのかはそのトレーニングを実施していくことでどんな特異的な適応を期待するのかによって変わってきます。

 ただし、闇雲に強度や距離を増やしてはいけません。トレーニングの効果はその機能に最大の負荷をかけたときもっとも向上します。変更した負荷が適切でなかったら期待していた効果がでないばかりか、オーバートレーニングや怪我に繋がることも考えられます。

 詳細は別の記事で書こうと思いますが、自分の現在の能力を評価した上でそれに見合った負荷を課していくことが効率的で安全なトレーニングを続けるためには重要です。

 負荷を増やすときには慎重に段階的に変更することが原則になります。

 

 

 

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